2014年6月6日金曜日

映画「グランドマスター」

ゴリゴリのカンフー映画を期待しちゃいけませぬ。ウォン・カーウァイの監督作品だからーという期待もダメです。実に残念な仕上がりになっておりました。

僕は一応、武術経験があり、中国武術にも傾倒したことがあるので、その視点からも語らせてもらいましょ。

この映画には様々な拳法が出てくる。詠春拳、形意拳、八卦掌、八極拳、洪家拳...漏れがあるか知れないけどーどれもこれもオリジナリティに溢れた拳法で特徴がある。中でも近年、ブルース・リーのお陰でその師匠「葉問」が有名になり、詠春拳がスポットライトを浴びたわけでー。本作もその流れに乗じたものですな。

先に挙げた拳法の中で1番派手なのは洪家拳。八卦掌は文字通り、拳を握ることがほとんどない。泥の中を歩くがごとく、スーッ、スーッと進む歩法が特徴的。優雅ではあるけど、知らない人が見たら、ただの踊りにしか思えないはず。

八極拳と形意拳は原点が同じではないかと思えるような歩法と爆発力がある。足を踏み出す時に、ズドンと踏み降ろす。どちらも質実剛健。ただし同じ八極拳でも色んな門派(流派)があり、見た目も大きく違うものもある。これはどの拳法でも言えるけど、歴史が長いと分派していくし、技の解釈は人それぞれなのでしょうがない部分でもある。八極拳はアーケードゲームのバーチャファイターで一躍有名になったね。

そして詠春拳...これが1番地味かも知れない。YouTubeあたりで検索すればヒットするけど、おそらく笑っちゃうと思う。でも、それが本場の詠春拳なんだ。

映画で冒頭、揚子江の北と南で栄えた拳法は別物扱いしてたけど、あれは正しくて、北派拳術、南派拳術という言い方をする。北方は広い平地が多いため、拳法自体も大きな構えや派手な技が多い。対して南方は川がいたる所にあるため、船上での活動が多い。そのために歩幅が狭くて、動作も小さくなりがち。まぁ、これも一概に言えないけどね。

この北派と南派、技術の理論からしてだいぶ違うので、映画にあったような南北の統一は難しいと思う。あの時代に、はたして映画の中の話が事実としてあったかどうかは、僕は聞いたことがない。でも葉問の伝記ってなってるんだよなぁ。

詠春拳の雰囲気をガッツリ知りたければ、ドニー・イェンやユン・ピョウの映画を観たほうが分かるし上手い。そもそも主役のトニー・レオンは武術経験はないわけで、そこを期待しちゃうと肩透かしを食らう。マトリックスのキアヌ・リーブスがそうであったように、有名な武術監督のユエン・ウーピンに鍛えられた、いわば映画用の武術。

格闘シーンはといえば、スローモーションの多用、カット割りの多さ、薄暗さーこれを劇場で観たら、何が何だかワケが分からないのではなかろうかと思う。ドニー・イェンの初期の映画も似たような撮り方なんだけど、カンフー映画でそれをやられると見づらくてしょうがない。まだ初期のジャッキー・チェンの映画のように、「ホイ...ホイ...」とジャンケンのようにやってくれたほうがマシだったりする。

上に挙げた拳法の中では洪家拳を除いて、本当は派手な蹴り技がほとんどないんだけど、そのまんまを映画にしたら、そりゃ面白くはないでしょうな。八極拳だって、肘、肩でぶつかっていく技は多いけど、映画ほど極端じゃないというかー。

ということで、評価はー
★★☆☆☆

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